スパークリングワインの誕生とシャンパーニュ

気温が上がってきますと、キリッと冷やしたシュワシュワした飲み物が飲みたくなります。

スパークリングワインの代名詞、シャンパーニュ(シャンパン)は高級ワインの一つとしても大変有名ですが、実はその産地はとても寒く、お世辞にも葡萄栽培に向いた環境とは言えませんでした。

なぜそのシャンパーニュ地方が世界のトップになったのか。今回は、スティルワイン(非発泡ワイン)にはない、スパークリングワインならではの特徴を調べていきましょう。

目次

  1. 瓶詰めスパークリングワインの誕生は南仏ラングドック
  2. マーケティングで販路を伸ばしたシャンパーニュ
  3. シャンパーニュのストロングポイント
  4. その他のスパークリングワイン


1. 瓶詰めスパークリングワインの誕生は南仏ラングドック

発泡性のワイン=スパークリングワインがどこで誕生したか、という歴史はありません。
なぜなら、発酵の過程で炭酸ガスが発生することは自然の現象だからです。

しかし、これを容器の中に封じ込め、商品として完成させたことから、スパークリングワインのストーリーは動き始めます。

その物語の出発地点は、意外なことに南フランスのラングドック・ルーション地方でした。

シャンパーニュ地方でドン・ペリニヨン司祭がシャンパーニュの原型を生み出す100年以上前のこと。ラングドックのリムーという町で、ガラス瓶とコルク栓で密閉していたワインが偶然スパークリングワインになっていました。

これを量産し、流通させたことから、リムーは世界最古のスパークリングワインの産地とされています。


2.マーケティングで販路を伸ばしたシャンパーニュ

かのドン・ペリニヨン氏も、故郷シャンパーニュの発泡性ワインをどうにか人々に広められないかと試行錯誤の中で、リムーでその技術の一部を習得したという記述が残っています。

今でこそトップ・オブ・スパークリングワインの確固たる地位を築いたシャンパーニュは、産地としては葡萄栽培の北限に迫る、非常に寒い土地。

酵母は一定の温度帯でしか活動できないので、気温が下がると冬眠状態になり、自然とアルコール発酵が止まります。しかし、発酵が終わったと思って瓶詰めされたワインの中には、酵母がまだ生きていて、温度上昇と共にアルコール発酵を再開するのです。

そう、かつて寒いシャンパーニュで瓶詰めされたワインは、交易先のイギリスでスパークリングワインに変身していたのでした。

これがシャンパーニュ地方のスパークリングワインのきっかけです。この偶然を、リムーから持ち帰った技術と、独自のブレンド(アッサンブラージュ)などの数々の工夫によって製品化した功労者が、盲目の僧侶、ドン・ペリニヨンその人でした。

このスパークリングワインは、元々の交易相手のイギリスの貴族たちにとても歓迎されました。また、シャンパーニュ地方の都市ランスでは、国王の戴冠式などのイベントが行われます。ここでも積極的に地元のスパークリングワインを振る舞い、国内外の王族・貴族たちを中心にヨーロッパ中に広まっていくことになったのです。


3.シャンパーニュのストロングポイント

そんなシャンパーニュの特徴は「酸」と「ミネラル」の力強さです。

複数ヴィンテージのブレンドによる品質の均一化や、瓶内二次発酵による液体に溶け込んだ泡の触感ももちろんですが、これらは今や世界中の様々な産地で導入されている技術。

冷涼なシャンパーニュ地方ならではの酸は、長期の熟成のためには必要不可欠な要素。長い熟成はアロマを複雑にし、滑らかな舌触りを生みます。

そして、太古の海洋微生物の化石を多く含む白亜質石灰岩の土壌は、硬質で気品に満ちた骨格をワインに与えます。

これらの特徴は他の地域には無い独自性です。だからこそ、シャンパーニュは現代においても人を魅了し、人に敬われる存在であり続けるのです。


4.その他のスパークリングワイン

シャンパーニュは祝いの場、高貴な場で嗜むことの多いスパークリングワインですが、私たちの生活はそんな場面ばかりではありません。

フォーマルなワインばかりでは疲れてしまいますから、世界のスパークリングワインでそれぞれの特徴に合ったシーンを楽しんでみましょう。

イタリアの筆頭は「フランチャコルタ」

州都ミラノから東へ向かうとイタリアのシャンパーニュ製法の筆頭、フランチャコルタのエリアにたどり着きます。

イゼオ湖の南側に広がる畑は、北イタリアに位置しながらも充分な耐熱によって豊かな果実味が形成されます。

シャンパーニュよりも長い熟成期間により、複雑な香りとキメの細かい泡が生まれますが、その柔らかい味わいは、イタリアらしい暖かさがあります。

気の知れた人とのゆったりとしたディナーで、リラックスさせてくれるスパークリングです。

世界中で大人気「プロセッコ」

同じく北イタリアのスパークリングワイン、プロセッコは世界最多の生産量と輸出量を誇ります。

プロセッコは「グレラ」という葡萄品種を使用したワインで、瓶内ではなくタンクの中で二次発酵させる”シャルマ方式”で生産されたものが一般的です。

シャルマで造られたワインは、フレッシュな青リンゴや洋ナシといったアロマが前面に出た軽やかな味わいになります。

この軽やかさが食前酒としてぴったりで、価格も求めやすいものが多いのですが、近年は品質の向上も目覚しく、世界人気はまだまだ収まりそうにありません。

高品質が増えてきた「カヴァ」

スペインはカタルーニャ地方のスパークリングワインといえば、この「カヴァ」。プロセッコ、シャンパーニュに次ぐ生産量で、瓶内二次発酵によって造られます。

チャレッロやマカベオといった土着品種を使用しており、独特の土っぽいような風味が特徴的で、地元のアヒージョなどの料理と非常に相性の良い味わいです。

最近では、シャルドネやピノ・ノワールなどの国際品種を多く使った、長期熟成のカヴァを見かけることが増えています。

アジア系の魚介料理ともよく合うので、多皿のパーティーなどでは特に活躍するスパークリングワインですね。

さて、スパークリングワインのあれこれを見てきましたが、気になるものはありましたか?

飲み頃の温度は6℃前後。私は暑い季節には冷蔵庫で冷やしおいて、飲む直前に冷凍庫でさらに冷たくしちゃいます。

飲みきれなくてもシャンパンストッパーがあれば、3~4日は泡は消えません。

これからしばらくは、暑さと湿気の不快感をスパークリングワインで追い払いましょう!

Written by Jun Murakami