グラスを選ぶときのポイントは、たったの2つ
お水を飲むときのガラスのコップ、コーヒーカップ、お味噌汁のお椀、スープボウル。
中に注いだ飲みものが最も引き立つように、私たちが普段使う器は形や材質が違います。
ひと口にワインと言っても、銘柄や年代によって性格が変わることはご存知の通り。
グラスもたくさんの形や大きさがあり、どうやって選べばいいか悩んでしまいますよね。
でも、最適なグラスを選ぶときに抑えるポイントはたったの2つ。
今回は、その日に選んだワインの特徴や、その日の気分に合わせたグラスの選び方を考えてみましょう。
目次
1.形で何が変わる?1−1.飲み口の形状が違うと味の印象が変わる
1−2. ボウル部分の大きさは、香りと変化の仕方に影響する
2.厚さは温かさ、薄さは繊細さ
3.まとめ
1. 形で何が変わる?

ワイングラスは背の高いもの、低いもの、丸く膨らんだもの、長細いものなど、様々な形がありますが、これには造形美だけではなく機能的な理由があります。
1-1. 飲み口の形状が違うと味の印象が変わる
とても重要な役割を担う部分の一つが、飲み口の形です。舌には味を認識する感覚器官「味蕾」がありますが、味蕾は舌のどの場所にあるかによってキャッチしやすい味が違うと言われています。
例えば、舌の先は甘みを感じやすく、舌の脇は酸味を感じやすいようになっているそう。
下の図のように、ワインの流れかたや量は飲み口の形状によって変化しますので、味の印象も変わるというからくりです。

1-2. ボウル部分の大きさは、香りと変化の仕方に影響する
もう一つ大切なのは、ボウル部分の大きさです。ワインは空気と触れ合い酸化反応を繰り返すことによって、香りが大きく変化する飲み物です。
ボウルが膨らむほど表面積が増え、空気と触れる部分が大きくなるので、香りは立ちやすく変化もしやすくなります。
複雑な変化が期待できそうなワインは、白でも赤でも大きなグラスで飲むのを勧められるのはこのためです。
しかし全てのワインが好ましい変化をする訳ではない、ということがポイント。
若くシンプルな香りのワインのときには、香りのボリュームが足りずにグラスに負けてしまうというのもよくある話で、こういうときにはグラスいっぱいに香りが届くように、比較的小振りなグラスを選びます。
また、表面性の小さい細長いグラスは、温度が変化しにくいのでしっかりと冷やして飲みたいタイプの白ワインやスパークリングワインなどに向いています。
2. 厚さは温かさ、薄さは繊細さ
形状と同じぐらい重要なのが、グラスの厚みです。
うすはりのグラスで飲むビールはいつも以上に麦の香ばしさや甘みを感じられたとか、お風呂上がりのコーヒー牛乳は分厚い瓶の方が美味しいというように思ったことはありませんか?
グラスが薄いほど、はっきりと飲み物の温度を感じ取ることができ、より敏感に、多くの要素に触れることができます。
分厚いグラスの良いところは、カジュアルなワインの温かさや素朴さを引き出してくれるところです。肩ひじ張らずに楽しめるワインも人生には必要ですね。
イタリアのトラットリアで、地元のワインを分厚いコップ型のグラスで飲みました。どこかほっとするような安心感を得られて、こういう楽しみ方もワインにはあるのだと、はっとさせられました。
どちらが良い、悪いではなくそのときの気分や雰囲気と合わせてグラスを選べるといいですね。
まとめ
という訳で、ソムリエとしてこれだけお家に置いておけばとりあえず大丈夫!というマストなグラスを考えてみました。
1.サンジョヴェーゼ or リースリング型グラス
これさえあれば赤でも白でも対応可能の万能型。
このグラスをニュートラルとして、ブルゴーニュ型やボルドー型との比較もしやすいです。
2.ブルゴーニュ型グラス
赤ワインだけでなく、ボリューミーな白を入れても美味しいのが、このブルゴーニュ型のいいところ。
サンジョヴェーゼ型とニコイチで持っているだけで、日常カジュアルに飲むワインはほぼ問題なく楽しめます。
3.ボルドー型グラス
ちょっといつもより予算をかけたフルボディの赤ワインには、サンジョヴェーゼ型は少し荷が重い場合があります。
そんなときには、ふた回りほど大きいサイズのボルドー型が一つあると重宝します。
補足
足の長いワイングラスはしまう場所に困る人もいるでしょう。
お家で飲む場合には足のない、ボウル部分だけのグラスもワインの魅力を楽しむには充分です。手から体温が伝わって、ワインの温度が下がってしまうのでは?という心配かもしれませんが、ずっとグラスを握りしめている訳でない限り、そこまで神経質になる必要はありません。

大切なのは、ご自分の思い描く理想のシーンにフィットするものを選択できること。
ワインの面白さの角度をグラスというツールで変えてみてはいかがでしょうか?
Written by Jun Murakami