ボルドー地方とボルドー品種

ワインにほんの少しでも関心を示した人が、最初に覚えることの多い品種は、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、ピノ・ノワール、そしてメルロです。

そして、ワインの銘醸地として名高く、「五大シャトー」でも有名なボルドーの代表品種が、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ。

今回はワインを飲む上で避けては通れない国際品種、世界中で栽培されているこのボルドー品種について、少し調べてみましょう。

目次

  1. 世界で人気のボルドー三銃士
  2. ボルドーには元々別の葡萄が植わっていた
  3. 意外とワインに厳しいボルドーの環境

1.世界で人気のボルドー三銃士

ニューワールドのカリフォルニアやチリでも、特に人気の高いボルドー品種。ニューワールドの場合は、よく熟すのでジャムのように濃厚な果実味と豊富なタンニンが特徴です。

カリフォルニアのナパ・ヴァレーでは「オーパスワン」のようにパワフルで濃厚なカベルネ・ソーヴィニヨン主体のワインが人気ですね。

フランスのお隣のイタリアでも、ボルドー品種は評価が高く、トスカーナ州の海沿いの産地ボルゲリで造られるサッシカイア、オルネッライア、そしてソライアの「3大アイア」は、ボルドー品種を使った「スーパートスカーナ」として、一世を風靡しました。

余談ですが、「カベルネ」という呼び方は日本特有の省略語かと思っていましたが、外国でもよく使われています。この場合、「カベルネ・ソーヴィニヨン」のことを指し、もう一つのカベルネ「カベルネ・フラン」のことは略さずに呼ぶのが一般的です。


カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー 2017

ナパ・ヴァレーのカベルネ主体。パワフルかつエレガントな味わい

2.ボルドーには元々別の葡萄が植わっていた

カベルネ・ソーヴィニヨンというこの葡萄、今ではワイン用品種の親分のような顔をしていますが、誕生したのは実は17世紀のこと。フランス南西部で自然交配によって生まれたこの品種は、特徴的なアロマと病気への耐性により、期待のルーキーとして世間を賑わせました。

それまでのボルドーは白ワインが主に生産される土地だったのですが、開拓されたばかりのメドック地区では、当時流行し始めていた赤ワイン用の黒葡萄を中心に植えていきました。その中には話題のカベルネ・ソーヴィニヨン、そしてメルロやフランも選ばれました。

実はボルドーには元々、マルベックやカルメネールという葡萄が主要品種として多く植わっていました。よく育ち、色や味わいが濃いこの品種は、冷涼な湿地帯のボルドーには取り分け喜ばれました。

しかし、19世紀後半にアメリカ大陸から持ち込まれた「フィロキセラ」という葡萄の根に寄生する虫によって、ヨーロッパ中の葡萄畑が枯らされ、ボルドーの畑も壊滅状態になります。

その後、フィロキセラ対策のために、アメリカ品種を台木にする手法が取られたのですが、元々の品種たちにこの台木は樹勢が強すぎ、品質ががくんと落ちてしまったのです。

そこで、マルベックなどに代わって主要品種として植えられたのが、今のボルドー品種の三銃士「カベルネ・ソーヴィニヨン」「カベルネ・フラン」「メルロ」という訳です。

3.意外とワインに厳しいボルドーの環境

今では、この三つの葡萄品種の活躍によって、ボルドーの名はワインとは切っても切り離さない関係になりました。しかし、ボルドーは葡萄にとって恵まれた土地ではないと言われていました。

ワイン用の葡萄には、乾燥と気温の寒暖差が重要なのですが、ボルドーはその条件とは真逆です。

海洋性気候で雨が多く、湿度も高い上に、メドックの最も高いところでも海抜44mと平坦な湿地帯。そんな葡萄栽培不毛地域では、今でも霜害・病害や発育不良によって、思うように葡萄が成熟してくれないときがあります。

そこで、ボルドーのシャトーが採用したのがアッサンブラージュ(ブレンド)。いくつかの葡萄品種を混ぜることで、年ごとの気候変化による生育の不ぞろいに柔軟に対応できるようにしました。

味を造るのは葡萄の生育状態。それぞれの状態を組み合わせ、未熟などの弱点の補完ができるようにしたのです。

カベルネ・ソーヴィニョンとカベルネ・フランは果皮が厚いのと、梗のすき間が比較的空いているので病気や腐敗への耐性が強い葡萄品種。湿気の多いボルドーではありがたい特徴です。

芽吹きが遅く春の霜害を避けられますが、晩熟型で涼しい気候では熟しにくく、また、秋の雨のリスクを受けやすい。

メルロもやはり病害に強い葡萄。芽吹きが早く早熟な葡萄のため、しばしば霜害に合うこともあるものの、早く収穫できるので雨のリスクを避けられます。

こうした葡萄品種の個性を観察し、長い年月をかけて、不向きだと思われた土地でワインビジネスを成功させたことこそが、ボルドーの最大の功績です。

そして、このボルドーでも大成した葡萄は、世界のどの土地においても一定以上の品質を残すことのできる、優れたポテンシャルを持つことを証明したのでした。


シャトー・シャントリュンヌ 2018

ボルドー左岸、マルゴー村の隠れた宝石

Written by Jun Murakami